コンサート情報
Concert Information |
舞台裏の内緒話
せっかくロシア人音楽家が周りにいっぱいいることだし、ちょっとわき道にそれて、 いろんなことをつらつらと書いてみようかと思います。質問をいただいた方への返答も、おもしろそうなものは載せていきます。暇な時に読んでみてください。
ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲第8番<ファシズムと戦争の犠牲者の思い出に>について
〜2000.4.4.&10. ストラヴィンスキー弦楽四重奏団演奏会プログラムノートより〜
1960年、ドレスデンで撮影されていたロシア・東独共同制作映画<5日5晩>(ユダヤ系ロシア人監督アルンシターム)の音楽を作曲するために同地へ同行していた彼は、 休日遠足に出かけ、ナチスによる強制収容所(当時はすでに博物館となっていた)へ入った。その日から3日間、彼はホテルの部屋から一歩も出て来ず、3日後、やっと姿をあらわした彼は、1曲の弦楽四重奏曲を手にしていた。その作品の主要素材となっていたものは、 全曲通して聞かれるショスタコーヴィチのモティーフDEsCH(レ・ミ♭・ド・シ)( Dmitri SCHostakovitch)、そして彼の過去の作品の断片である。 このショスタコーヴィチのモティーフは、1947‐48年作曲のヴァイオリン協奏曲第1番のカデンツァで初めて使われたもの。 第1楽章で交響曲第1番と第5番、第2楽章でピアノトリオ第2番のユダヤの主題、第3楽章でチェロ協奏曲第1番、第5楽章で スターリンの芸術家に対する圧力の象徴ともなるオペラ<ムチェンスクのマクベス夫人>から、などと引用が多く見られる。
ソヴィエト連邦で初めて5つの国際コンクール優勝歴をもったロシア人ヴァイオリニスト、ボリス・L・グトニコフは、その第3楽章のワルツ(死者のスケルツォ)をこう描写している。 「ある強制収容所。ナチの軍曹がひとり、上半身裸、幅広の軍服ズボンにぴかぴか光る革のブーツ姿で、立っている。彼の前には囚人のユダヤ人ヴァイオリニスト。 彼が弾く間中、この軍曹は鞭(ピチカート)を鳴らしている。」
本来、軽快で陽気なイメージのあるスケルツォだが、ユダヤの民謡をこよなく愛し、ユダヤ人たちのロシアでの困難を理解し、ユダヤをもっとも近いものに感じていたショスタコーヴィチ、 ユダヤの性格を全て音楽に表したマーラーの音楽を大変愛していたショスタコーヴィチ、そしてスターリンの弾圧・検閲をうまくすり抜けなければならなかったショスタコーヴィチは、 ユダヤ人のユーモアの中に隠された悲劇と涙のように、このスケルツォの中で、そしてこの作品全体で、何かを言いたかったに違いない。
速報!ロシア国立交響楽団でスト(2/11)
モスクワのロシア国立交響楽団は、音楽監督スヴェトラーノフとは演奏しない、とストライキを始めた。 サンクト・ペテルブルグ・フィルハーモニーも同調しているらしい。
ロシア国立交響楽団(スヴェトラーノフ指揮)総会決議〜2000年1月6日〜
出席者:オーケストラ団員70名
T.過半数の賛成により、ロシア国立交響楽団(E.スヴェトラーノフ指揮)は、下記要求をすることを決定した。
1) 雇用主・オーケストラ団員間の協定締結
2) オーケストラのステータス変更の採用、すなわち
a)“ 国立交響楽団(E.スヴェトラーノフ指揮)State Academic Symphony Orchestra Conducted by E. Svetlanov”から“ロシア連邦国立交響楽団State Academic Symphony Orchestra of Russian Federation”への名称変更
b) 1992年版“経営”の章の変更
3) 芸術監督および首席指揮者E.スヴェトラーノフの解雇。1999年10月3日開催の総会決議におけるスヴェトラーノフ不信任案との議決一致による(1999年10月3日:不信任68票、反対9票、白票 28)
4) オーケストラ資料のセキュリティーの本質的改善
U.ロシア連邦文化省が衝突解決の責任回避をしたため、総会はストライキを決断した。 ストライキは2000年2月9日に開始し、この衝突が解決するまで続行する。
投票結果:賛成69票,反対1票
ロシア人はジョークが大好き!?
そう。今までいろんな国の友だちと付き合ってきましたが、ロシア人ほどジョークの好きな人たちはいないと思います。 この間びわ湖ホールに来たマリインスキーオペラのオケの人たちのバスに同乗し、京都まで乗せてもらいましたが、なんとその間中、ジョークを言い合って、みんなで大笑いしていたくらい。
指揮者トーマス・ザンデルリンクは、ドイツ人ですが、お父さんのレニングラード・フィルハーモニーでの仕事の関係で、幼少時代はずっとロシアで過ごし、彼のロシア語はパーフェクト。全く外国人の訛りはないそう。 その彼もジョーク好きで、大阪シンフォニカーの弦のトップたち(グルジア人、ウクライナ人)と共に盛り上がっていました。
ロシアには、アネクドート、アフォリズムというものがあり、アネクドートは一口話、
アフォリズムは箴言と訳されています。アネクドートもアフォリズムも、おかしさのなかに何か深い意味があったり、単なる事実なのだけど何かおかしかったり。私たちのまわりの社会にある欠点を比喩的にあばいているのです。
これらはロシア文化の重要な一部となっていると言われます。歴史上、そして現在、経済的にも社会的にも大変な道を歩んできたロシアだからこそ、「笑い」を必要としているのでしょうか。ロシア人との付き合いはまだ初心者の私。
これからもっと彼らのことを知っていきたいなと思います。
つい今日、ロシア総領事館勤務の友人がアネクドート集を送ってきてくれました。いくつかご紹介しましょう。
* * *
世紀の大事件
ヒロシマ…………45
チェルノブイリ…86
WINDOWS ………95
* * *
サルがのこぎりで爆弾を切っていた。ほかのサルがそれを見て叫んだ。
「何をしているんだ。爆発するぞ。」
「心配するな。まだほかにもある。」
* * *
「私のポケットの中に手を突っ込んで何をしているのだ。」
「マッチを探しているのです。」
「それなら私に言えばいいじゃないか。」
「頼むのを遠慮したのです。」
Link
アネクドートについての日本語ホームページ
http://www.bekkoame.ne.jp/~leskov/anekdot.htm
アネクドート・アフォリズムを毎日送ってくれるロシア語ホームページ
http://bk.ru/
ショスタコーヴィチ<弦楽四重奏曲第13番>における特殊奏法
知る人ぞ知るショスタコオケ
<ダスビダーニャ>の団長さん
S氏から質問を受けました(Sさんごめんなさい。勝手に載せてしまいました…)。紀尾井ホールでのモルゴーア弦楽四重奏団の演奏会を聴いた彼らの中で話題になっていたそうです。
質問「ある箇所で、弓の木の部分で、弦ではなく楽器のボディーを叩いているような音がして、どう見てもそのしているようにしか見えなかった。スコアには
col legnoとしか書かれていないのだが、これは何? どうしてモルゴーアは、ああやって弾いたの?」
回答「ショスタコは
col legnoとは書かず、×印をスコアに書いています。これは、何でもいいから、
“なにかを叩いた音”を要求したものです。ちなみにタネーエフSQは楽器を守るため、譜面台をたたいていました。別に意味があるわけではなく、ただこういった奏法を取り入れることが当時の流行だったので
(コンクリート・ミュージック;シュトックハウゼンなど)ショスタコーヴィチも使ってみたのです。」
<タネーエフ弦楽四重奏団チェリストのレヴィンゾン氏の回答>
ゲルギエフは嫌われ者?
かのマリインスキーオペラ。今回の日本ツアーでもすばらしい音楽を聴かせてくれました。私自身、1994年の<ボリス・ゴドノフ><スペードの女王><炎の天使>以来だったので、とても楽しみにしていました。
サンクト・ペテルブルグ初演のヴェルディのオペラ
<運命の力>。ゲルギエフはやはりやってくれました。オケが特に素晴らしい!!!あの集中力と息の長さは、やはりゲルギエフ、と感じさせられました。次はやっぱりロシアものが聴きたいかな。
開演前の舞台裏。オケの団員たちとのおしゃべり。彼らのスケジュールは、あのクオリティーの高いパフォーマンスからは
想像できないほど凄まじいもの。毎日の東京公演の最後に、びわ湖ホール公演。大阪からサンクト・ペテルブルグに飛ぶのかと思いきや、「今朝新幹線でびわ湖に来て,リハーサルなしの本番。
今日また東京泊。明日朝の便でロシアに飛び、2日後からレコーディング。…」
マリインスキーに入ったら、経済的には保証されるけど(それもこれもゲルギエフの力)、馬のように働かされる、という言葉どおりでした。
プレーヤーたちは、彼のことを、むしろ嫌っているようでしたが、それでもあの音楽をあのオケから引き出せるのはゲルギエフだけ、と言うのは事実。舞台裏ですれ違ったゲルギエフから発せられるオーラ、そして威圧感はものすごいものでした。
やはり指揮者は嫌われる存在。そういうことなのでしょうか。
マリインスキー歌劇場のホームページ
http://www.mariinsky.spb.ru/